【アメリカの介護税】あなたの州にも導入!?今知っておけば怖くない!

今後10人のうち7人は何らかの形で介護を必要になる状態と言われているとご存じですか?
これは交通事故に遭う確率(1000人のうち3人)よりもずっと多いのです。

日本でも40歳以上の人は介護保険料の納付が義務付けられていますが、
アメリカでも、日本と同じような介護保険制度を介護税として導入されることが検討されています。

介護税は英語では「Long Term Care Tax」「LTC Tax」等と呼ばれます。
アメリカは日本のように国で1つの介護保険制度のようなものはなく、各州ごとに詳細なプランを策定しています。
現在アメリカではワシントン州でのみ、介護税が実際に導入されています。

前回のIULの記事でも少し触れた介護税ですが、今回詳しく解説します!

この記事でわかること

  • アメリカ(ワシントン州)の介護税とは?
  • 介護税を回避(Opt-out)できるケースは?
  • 今後介護税が導入される州は?
  • 介護税は制度としてどの程度期待できるのか?

アメリカ(ワシントン州)の介護税とは?


現在導入されているワシントン州の介護税はどのようなものか説明します。
なお、ワシントン州の介護税は「WA Cares Fund」と呼ばれています。

税率0.58%(上限なし)
会社員の場合は給与から天引きされる。
個人事業主の場合は、加入するかどうか自分で選べる。
税率は所得にかかわらず一律同じ。
ワシントン州平均介護税額は年300ドルくらいと予想されている。

受給対象者ワシントン州在住であること
介護税を納付していた後に州外に引っ越した場合は対象外

納付必要期間
基本パターン:介護税を合計10年納付していること(うち5年間は連続して納付しているもの)
就業中、もしくは退職後すぐに要介護になった場合:過去6年間のうち3年間は納付していること
なお、どのパターンでも1年あたり500時間以上就業している必要がある。

1968年より前に生まれた人で1年以上納付した人は一部受給できるパターンもある。

受給要件
ADL(Activity of Daily Living)と呼ばれる日常生活動作が3つ以上1人でできない場合、受給資格を得ることができる。
具体的な動作は以下の通り。

・動作(ある場所からある場所へ移動できるか?/椅子へ移動できるか?/ベッドから出たり入ったりできるか?)
・衛生(お風呂に入れるか?/トイレに行けるか?)
・食事(食事がとれるか?/薬が飲めるか?)
・認知機能(記憶したり思い出せるか?/日々の課題に意思決定できるか?)

給付上限金額1日あたり最大100ドルまで(上限は生涯で36,500ドルまで)
今後インフレ率を調整して上限が変わる可能性はある

参考サイト:Home | WA Cares Fund

介護税対象外(Opt-out)となるケースは?

介護税納付の対象外になる方は以下のように設定されています。
・ワシントン州で働く連邦職員(Federal Employee)
・任意で加入していない部族の部族ビジネス(Tribe Business)の従業員
・個人事業主で任意で納付していない人
・退職している人・働いていない人
・2021年11月1日までに民間の介護保険(生命保険の特約含む)に加入している人

(以下も除外の可能性がある)
・住居がワシントン州外にある人
・非移民ビザで一時的に就労している人
・ミリタリーで働く人の配偶者またはパートナー
・従軍時に障害を負った退役軍人

なお、事前に民間の介護保険(生命保険の介護特約を含む)に加入していた人は対象外となりますが、
介護税が導入発表されてから民間の介護保険に加入希望者が殺到し、対処がしきれなくなったため、
2021年11月より前に各民間の保険会社は介護保険の新規受付を停止したという経緯があります。

今後介護税が導入される州は?

2024年1月現在、介護税が導入されているのはワシントン州のみですが、
すでに12州の州議会で介護税の導入を検討されています。
アラスカ・カリフォルニア・コロラド・ハワイ・オレゴン・イリノイ・ミシガン・ミネソタ・ニューヨーク・ノースキャロライナ・ペンシルバニア・ユタ

その中でも今後、確実に介護税が導入されるのはカリフォルニア州と言われています。
2023年夏ごろには2024年1月にも介護税導入の最終決定がなされるという情報が流れましたが、
どうやら詳細を決定するのに時間がかかっており、延期になっているようです。
今後、新しい情報を得たらこちらのブログにて共有します。

介護税は制度としてどの程度期待できるのか?

個人的に、ワシントン州で導入されている介護税の詳細を見ると、日本人にとっては特に使いづらい制度だと感じています。
その理由としては主に3つあります。

  • 給付をもらえるまでに制限がある
  • 州外に引っ越すとこの制度は使えない
  • 利用可能上限額が低い

まず、給付をもらえるまでに指定の加入期間(主に10年)をクリアしないといけないので、
アメリカの転勤族の方や、定住されない方はこの制度を活用できない可能性が高いと思います。
また、加入期間の基準を満たしていたとしても、ADL3つ以上介助が必要という制限も民間の介護保険と比べて厳しい基準になっています。

こちらのブログをご覧になられているみなさんは日本人の方が多いと思いますが、
アメリカの医療制度や介護事情などを考えると老後は日本に帰国しようかな、と考えている方も多いかと思います。
もし老後に日本に帰国した場合、ワシントン州の介護税の制度だと実際使えず、払いっぱなしで終わります。
実質ただの増税です。

最後の給付額上限36,500ドルですが、これは生涯の介護費用を賄うには不十分だと思います。
例えば、カリフォルニア州ロサンゼルス地域では、要介護の方では難しい家事代行サービス(ホームヘルパー)の費用だけでも年間71,000ドルかかると策定されており、
この給付金だと半分しか賄えない計算となっています。

参考サイト:Cost of Long Term Care by State | Cost of Care Report | Genworth
(ちなみに、この金額を算出した下記サイトはあなたの居住地域の介護費用を簡単に計算できるようになっているので、気になる方はチェックしてみてくださいね。)

つまり、ワシントン州で策定する介護税で取り扱っているサービスは実際に使えるかどうか疑問が残るのです。


ちなみに、民間の介護保険であれば、ワシントン州の介護保険よりも制限が少なく、海外でも使える商品もあります。
また、今民間の介護保険に加入しておけば、将来ご自身の州で介護税が導入となった際に加入除外対象(opt-out)となる可能性もあります。
こちらでは介護保険も取り扱っており、幅広い商品からお客様のニーズに沿った商品を提示させていただきます。
興味がある方は無料相談をお待ちしております。